土壌汚染調査・浄化 株式会社エンバイオ・エンジニアリング

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発表論文

フェントン反応剤を用いた浄化方法について

(著作者)
  • 中間哲志
  • 長野勝己
  • 大澤武彦
  • 山内 仁
  • 株式会社エンバイオ・エンジニアリング

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1.はじめに

フェントン反応では、生成するヒドロキシラジカルが有機化合物等を無差別に酸化して、化学結合を切断して分解する。このため、他の原位置浄化工法と比較して、汚染物質を直接分解するフェントン反応を用いた土壌、地下水の原位置浄化工法は浄化期間が短い。また、最終反応生成物が無害な無機化合物であること、海外や国内で多くの汚染物質浄化の報告があること、およびプロセスは制御しやすいことなどの特長を有することから、油分やベンゼンで汚染されたガソリンスタンドや製油所の土壌や地下水の浄化対策として用いられ、多くの実績をあげている。これまでフェントン反応剤を用いた浄化は、地下水を対象とした原位置注入工法を主に採用してきた。この工法はフェントン反応剤を地下水に注入することで地下水を介して拡散し、地下水や飽和土層の汚染対象物質を分解する。しかし、不飽和土層や薬剤注入が困難な粘性土層では、フェントン反応剤が汚染部位に行き届かないことから、浄化が進まないケースが見られた。そこで、フェントン反応剤を用いた浄化方法として、混合処理や薬剤浸透層注入工法など新たな工法を、従来のフェントン反応剤の原位置注入工法と組み合わることを考案して、試験的に実施した。

本報告では、フェントン反応剤の原位置注入工法の課題と事例を紹介し、適用限界に関する知見をまとめ、課題を改善するための組み合わせ工法の効果について所見を述べる。

2.フェントン反応剤を用いた浄化対策での課題とその適用範囲

2.1 フェントン反応剤の原位置注入の課題

原位置浄化を行う上で、汚染の形態や原因はサイト毎に異なり、個々の汚染サイトの状況に合わせて仮説検証を行って浄化計画を立て、浄化完了までのストーリーを念頭に置きつつ浄化対策を実施ししなければならない。また、浄化対策の工法選定や設計を行うにあたり既存資料に基づく調査によって汚染の原因や拡散機構などを明確にしておくことが大切である。しかし、実際の浄化対策では、調査を行う者と浄化工事を実施する者とが別であるケースも多く、浄化対策を行うための調査としてはその質が不十分であることもある。このような場合、調査資料に基づいて仮説検証を行い、施工計画を立てて浄化対策工事を行っても、調査結果と実サイトの状況とが異なっていることから、浄化がうまく進まないケースがある。本報告で取り上げるフェントン反応剤を用いた浄化を、施工が簡単で、低コストかつ短期間の浄化が可能な、安易に導入できる浄化方法と考えている技術者もいる。しかしフェントン反応剤を用いた浄化方法も、他の浄化対策方法と同様に、その特徴や浄化のプロセスを把握しておかなければ浄化はうまくいかない。表1にフェントン反応剤による浄化対策(ここでは原位置注入による化学酸化処理工法)における課題(起こった現象とその原因)を示す。

2.2 各課題の事例と適用限界に関する知見

2.2.1 地下水の濃度が低下しないケース

地下水の濃度が低下しないケースとして、表1には①不飽和土層に汚染源があり、フェントン反応剤が浸透拡散しなかった、②腐植土に汚染物質が染み込んでいて、汚染物質が少しずつ溶け出した、③高アルカリ土壌のため、フェントン反応が阻害された、などをあげた。特に高アルカリ土壌の場合、過酸化水素が自己分解するため、フェントン反応を起こさない。このことは、仮に調査を実施した会社と浄化対策を実施する会社が異なっていたとしても、フェントン反応剤の原位置注入を検討するためのトリタビリティー試験で事前に把握することができる。事前検討を行う時点でこのようなことが明らかになった場合、フェントン反応剤の原位置注入を実施する前に何らかの対策を講ずるか、フェントン反応剤の原位置注入を浄化対策として採用しないようにすべきと筆者らは考える。

しかし、調査した会社の資料や浄化の依頼主や調査を行った会社から送られてくるサンプルでトリタビリティー試験を行って施工計画を立てる場合、見逃されがちになるのが、不飽和土層の汚染残留と腐植土の存在である。不飽和土層の汚染の見落としや残留は、調査の質や調査後の土地改変が原因となっていることが多いように見受けられる。不飽和土層に残留する汚染源から汚染物質が供給され続けるために地下水の濃度が低下しない。また、腐植土は粘性土層に挟まれて薄く存在することも多いため、トリタビリティー試験用の試料として見逃されたり、堆積してスポンジ(ドレーン材)のようになっているために汚染の原因として拡散機構を推察することが困難であったりした。腐植土は多くの有機物を含むため、フェントン反応剤の多くが腐植土の分解に消費された結果、汚染物質の分解に必要なフェントン反応剤が不足して地下水の濃度が低下しない。あるいはスポンジのような腐植土層から少しずつ浸み出した汚染物質が供給され続けるために地下水の濃度が低下しない。図1に腐植土が挟在する土壌の場合のフェントン反応剤注入時の地下水ベンゼン濃度の変化を示す。フェントン反応剤注入2日後は一時的に地下水のベンゼン濃度は低下しているものの、2週間後には濃度は再上昇していることが分かる。図1に示す様に汚染が腐植土に存在する場合、フェントン反応剤注入直後に地下水のベンゼン濃度は一時的に低減しても、しばらくすると当初の濃度と同程度まで再上昇することがある。また、フェントン反応剤による有機物(腐植)の酸化分解によって注入井の吐出部分(スクリーン周辺)に空隙が出来やすくなることにも留意しておかねばならない。したがって厚く腐植土が堆積した汚染地盤でのフェントン反応剤による浄化は困難が予想される。

2.2.2 土壌の汚染物質溶出量が低減しないケース

土壌の汚染物質溶出量が低減しないケースとして、①粘性土であったため、フェントン反応剤が拡散しなかった、②エンジンオイルや作動油など分解できない油種で汚染されていた、などがあげられる。このうち②については、トリタビリティー試験で実施されるGC/FIDのガスクロマトグラムでエンジンオイルや作動油であることを推定しておけば、フェントン反応による浄化は困難なこと(あるいは不適当なこと)を予見できる。

①は現場でしばしば直面する問題である。長期にわたる漏洩により微細孔を伝って燃料油が浸みた粘性土は油粘土のようになっていることもある。また、過去の施設の改変時に発生した汚染土をロームや粘土に挟み込んで(混合されて)埋め殺されている形跡が確認されることもある。このような地盤に注入井を設置してフェントン反応剤を注入しても、注入井の周辺からフェントン反応剤がそのままリークするばかりで浄化は困難である。

調査結果で、「埋土」や「砂礫混じり粘性土(埋土)」としか表示されていない様な場所では、注入が困難な粘性土ではないことを確認した後にフェントン反応剤の原位置注入工法を選択肢として考慮すべきである。図2に注入・拡散が困難な粘性土地盤にフェントン反応剤を注入した場合の土壌のベンゼン溶出量の変化を示す。このサイトでは、フェントン反応剤を注入したものの注入圧力が上昇して大半はリークしており、土壌ベンゼンの溶出量の明確な低下傾向は観察されず、採取したコアでも油臭と油膜の低減もほとんど観察されていない。

2.2.3 地下水の濃度や土壌溶出量が上昇するケース

フェントン反応剤を汚染土壌に注入後、汚染物質の土壌溶出量や地下水濃度が上昇する現象がシルト質砂層やシルト混じり砂礫層などの飽和土層で時々見られる。これは土粒子に付着あるいは吸着されていた汚染物質がフェントン反応剤によって溶出しやすくなり、地下水に移ったためと推察している。図3はフェントン反応剤を数回に分けて注入したときの土壌ベンゼン溶出量と同一エリアの地下水ベンゼン濃度の変化を示したものである。注入1回目後の地下水のベンゼン濃度は<0.001まで低下したものの、2回目、3回目の注入後は濃度が上昇しており、土壌のベンゼン溶出量が低減傾向にある4回注入後は地下水のベンゼン濃度も低下している。1回目の注入では既に地下水に存在しているベンゼンを分解しているフェーズで、2~3回目の注入は土粒子からベンゼンを剥がしながら分解するフェーズ、4回目は剥がしたベンゼンを分解するフェーズであると推察している。このような濃度変化はトリタビリティー試験でも観察されることから、事前の予測は可能である。

3.フェントン反応剤を用いた浄化方法の提案

フェントン反応剤の原位置注入工法だけで浄化できる地盤には限界があり、フェントン反応剤による浄化は不適当と判断されるケースもある。先に示したフェントン反応剤原位置注入が困難なサイトでも、可能な限りフェントン反応剤の特長を浄化対策に役立てるために、別な工法と組み合わせた方法を試験的に実施したので紹介する。

(1)プロパゲーション工法

プロパゲーション工法1)は、汚染された原位置地盤に透水性の高い薄い砂層(プロパゲーション)を形成し、これにフェントン反応剤を注入することにより、原位置で浄化を行う工法である。フェントン反応剤が拡散しにくい粘性土でも、形成されたプロパゲーションとプロパゲーション形成時に発生する多数のフラクチャーを通じて、汚染土壌がフェントン反応剤との広い接触面積を確保できることから浄化を促進できる。図4にプロパゲーション工法を用いて原位置注入を行ったサイトの地下水のベンゼン濃度の推移を示す。このサイトは概ねGL-0.0~4.0mはシルト質粘土、GL-4.0m~6.0mは砂質土で構成されており、GL-3.0~4.0m(地下タンク底盤付近の深度)に汚染源があったことから、GL-3.5mの深度にプロパゲーションを形成してフェントン反応剤を注入した。同表からフェントン注入後、地下水のベンゼン濃度は確実に低減傾向にあるといえる。

(2) 薬剤浸透層注入工法

地下タンク周りの不飽和土層(埋土)や粘性土層が油で汚染されている場合、タンク撤去と同時にタンク周りの汚染土壌の掘削除去を行うケースが多い。このとき問題になるのはベンゼンや油分が地下水に残ったり、地下水に移ったりすることである。このようなタンク撤去と掘削除去を行ったサイトで薬剤浸透層を施工してフェントン反応剤を注入して浄化した事例がある(図5)。掘削除去をした後に掘削底面に粒径の大きな単粒砕石を敷き均して、ここにフェントン反応剤を注入して効率よく地下水を浄化する工法で、このときの地下水のベンゼン濃度の推移を図6に示す。このサイトでは地下水ベンゼンの濃度は確実に低下させることができた。しかしこの工法は薬剤浸透層に汚染地下水が集まりやすくなることから、掘削除去した箇所の周辺の土壌あるいは浄化対象外エリアの土壌に汚染源がないことを確認しておく必要がある。

(3) 混合処理工法

フェントン反応剤が浸透しにくく、拡散しにくい不飽和土層(粘性土)、あるいは濃度の再上昇が見られた砂質シルト層において、攪拌機を用いてフェントン反応剤を混合攪拌したときの事例を図7に示す。同図はベンゼン溶出量と地下水ベンゼン濃度の変化を示している。このサイトでは当初フェントン反応剤の原位置注入を行っていたが、濃度の低下が思わしくなく、フェントン反応剤原位置注入3回後にフェントン反応剤の混合処理を行った。混合処理後、図7が示すとおり大幅な濃度の低下が見られ、混合処理も有効な方法であることが確認された。しかしこの工法はフェントン反応剤を混ぜながら攪拌して土を乱すために土が高含水状態となり、液性限界を超え、土の支持力が失われることもある。そのため支持力の回復策について予め留意しておく必要がある。

4.まとめ

(1)

原位置注入によるフェントン反応剤の浸透拡散が困難な不飽和土層や粘性土層では、プロパゲーション工法、薬剤浸透注入工法、混合処理工法を組み合わせることで浄化を促進させることは可能である。

(2)

腐植土や高アルカリ土でのフェントン反応剤による浄化は、フェントン反応剤の消費量が増加し、浄化は困難が予想されるが、これはトリタビリティー試験で事前に予知できる。

(3)

フェントン反応剤の注入により、濃度が上昇するケースがある。これは土粒子から汚染物質が剥がされ、地下水に移るためと推察され、フェントン反応剤の消費量は増加する。これはトリタビリティー試験で事前に予知できる。

(4)

フェントン反応剤では浄化が困難(不適当)とされるエンジンオイルや作動油等による汚染もトリタビリティー試験で予知できる。

[参考文献]

1)

中間哲志、他:ハイドロフラクチャー法を応用した汚染土壌の原位置浄化方法, 第10回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会, セッション6, No.111, 2004

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