土壌汚染調査・浄化 株式会社エンバイオ・エンジニアリング

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発表論文

化学酸化剤としてのアルカリ活性化過硫酸ソーダのVOCなどに対する分解と浄化適用性

(著作者)
  • 大澤 武彦1
  • 角田 真之2
  • 西村 実1
  • 1株式会社エンバイオ・エンジニアリング
  • 2株式会社 ランドコンシエルジュ

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1.はじめに

昨今、汚染土壌・地下水の措置技術のキーワードはオンサイト或いは原位置(In Situ)になりつつある。90年代の原位置浄化技術といえば揚水曝気法、土壌ガス吸引法が主流であったが、2000年以降は汚染物質を分解(浄化)する微生物酸化・還元法や化学的酸化・還元法も採用される機運にある。

原位置化学的酸化法(以下In Situ Chemical Oxidation:ISCO と略す)で言えばフェントン氏試薬を用いた化学酸化法(以下 F-ISCO と略す)が多用されている。フェントン反応を効果的に進める条件の一つが、触媒である2価の鉄を水酸化鉄に変化することを防ぐために反応環境のpH を2~4程度の酸性環境にコントロールすることであるが、サイトによっては、反応環境を酸性状態にすることが難しいことがある。その原因はサイト内にコンクリートガラが埋められ、土壌がアルカリ性となっている1)、既に何らかの汚染物質に対する措置が行われ土壌がアルカリ性となっているなどのために酸性薬剤を注入しても酸性環境を維持することができない。このようなサイト固有の土質によりF-ISCO が不適となるほかに、沖縄県の琉球石灰岩のように、サイトが所在する地域の土質が酸を消費する性質のため、フェントン反応にとって適切な酸性域のpH にすることが できず、F-ISCO が適用できないこともある。

F-ISCO の変法で、比較的浅い不飽和帯にフェントン薬剤を散布・混合して汚染物質を浄化する方法があるが、この散布・混合法では分解効果が長く持続性のある薬剤の散布が望まれる。

最近、新しい化学酸化剤として過硫酸塩が注目され2)、以上述べたF-ISCO が不得手とするアルカリ性環境の土壌あるいは長期持続性の要求にも対応可能といわれている。

過硫酸塩が化学酸化剤として機能するのは、過硫酸塩が水に溶けると過硫酸イオン(SO2-)になり、これが光、熱或いは鉄触媒により活性化されると硫酸ラジカル(SO2-・)という非常に酸化力が高い酸化種(オキシダント)が生成されるからである。硫酸ラジカルはフェントン反応において生成されるヒドロキシルラジカル(・OH)に匹敵する酸化力を有している2)、3)

過硫酸塩にはナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩があり、化学酸化剤としては使い勝手が良い過硫酸ナトリウム(以下Sodium Per Sulfate:SPS と略す)が汎用されている。

SPS から酸化力の強い硫酸ラジカル(SO2-・)を生成させる方法に、中性、弱酸性、強酸性更にはアルカリ性で硫酸ラジカルを生成させる方法がある3)。その中で、アルカリ土壌にも対応できるのがアルカリ活性化SPS(以下Alkaline Activator・SPS:AA・SPS と略す)である。

本研究では浄化現場においてアルカリ溶液の取り扱いの容易性、安全性確保への配慮からRegenesis 社がRegenOx 酸化法の活性剤である薬剤をSPS のアルカリ活性化剤(以下AA 剤と略す)として応用した。筆者はAA・SPS 化学酸化法はフェントンタイプの化学酸化とお互いの弱点を補いつつ用途に応じて使い分けができる技術と考えるが、AA・SPS 化学酸化法分解性に関する情報は少なく、研究段階であるとも言われている2)。そこで、本研究では汚染土壌・地下水浄化の対象として典型的な塩素化VOC、BTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン)TPH(軽油)選び、それらに対するAA・SPS の分解性および分解阻害性をフェントンタイプの化学酸化法と比較し、アルカリ活性化過硫酸ソーダ化学酸化法の浄化技術としての特徴を明らか にする。

2.実験

2.1 基質分解試験の方法

(1) Bz 分解試験(表-1 [1])

予めミリQ 水に150mg/L 程度の濃度になるようにベンゼン(以下Bz と略す)水溶液を調製し、72 時間穏やかに撹拌し、母液となるBz 水溶液を用意した。この母液を用い、表―1中の[1]の条件で異なるSPS 濃度のBz試験溶液(ⅰ,ⅱ & ⅲ)を調製した。AA の濃度条件は同一とした。[1]のⅰ)はアルカリ活性化剤を苛性ソーダとし、SPS 濃度はⅰ)と同一とした。[1]のⅰ)~ⅳ)のそれぞれの試験溶液毎に、24 時間、168 時間の反応用試験溶液を調製した。調製後、溶液を所定時間静置し、反応後のBz 濃度をヘッドスペース(HS)-GC/MS 法により測定した。

(2) BTEX 分解試験(表-1 [2])

10mg/L 程度の濃度になるようにベンゼン、トルエン(T と略す)、エチルベンゼン(E と略す)及びキシレン(X と略す)水溶液をBTEX 毎に調製し、72 時間穏やかに撹拌し、母液となるBTEX 毎の水溶液を調製した。この母液を用い、表―1中の[2]の条件でBTEX 毎の試験溶液(ⅰ,ⅱ,ⅲ & ⅳ)を調製した。SPS 濃度及びAA の濃度条件は同一とした。[2]のⅰ)~ⅳ)のそれぞれの試験溶液毎に20 分、40 分及び60 分向けの試験溶液を調製した。調製後、溶液を所定時間静置し、反応後のBTEX 濃度をヘッドスペース(HS)-GC/MS 法により測定した。

(3) 塩素化VOC 分解試験(表-1 [3])

20mg/L 程度の濃度になるようにPCE、TCE、cis1.2-DCE 及び1.1.1-TCA 水溶液を化合物毎に調製し、72 時間穏やかに撹拌することにより、母液となる化合物毎の水溶液を調製した。この母液を用い、表―1中の[3]の条件で化合物毎の試験溶液(ⅰ,ⅱ,ⅲ & ⅳ)を調製した。SPS 濃度及びAA の濃度条件は同一とした。[3]のⅰ)~ⅳ)のそれぞれの試験溶液毎に20 分、40 分及び60 分向けの試験溶液を調製した。調製後、溶液を所定時間静置し反応後の4種の塩素化VOC 濃度をヘッドスペース(HS)-GC/MS 法により測定した。

(4)TPH の分解性試験

本試験では媒体の性質に影響を受けずに、AA・SPS によるTPH の分解性を把握することを目的とした試験を標準砂系とし、媒体が有機物を多く含む性質がTPH 分解性に与えるか否かを把握することを目的とした試験を黒土系とした。ここでは3種類の酸化法の比較からAA・SPS 法の特徴を明らかにする。

1)模擬汚染土壌の作製

模擬汚染土壌の媒体は豊浦標準砂および園芸用黒土の2 種とした。汚染物質としてのTPH は軽油とした。媒体中のTPH 濃度が均一となるような模擬汚染土壌を次の方法で作製した。
4g 程度の軽油を含む2L 程度のエチルエーテルを用意する。これを所定量の標準砂に添加し、混合・攪拌後、ドラフト中でエチルエーテルを揮発させ、TPH が付着した標準砂を得た。黒土もこの方法でTPH 汚染黒土を作製した。

2)TPH 分解試験サンプルの調製

標準砂及び黒土の両媒体について3 種類の酸化法(伝統的フェントン、キレートフェントン4))及びアルカリ活性化過硫酸)のTPH 分解性試験の酸化剤の濃度条件他を表-2 にまとめた。
表-2 の条件で調製した資料は1L 用のプラスチック製の容器に入れ、15 日間静置・反応させた。

3)TPH 分析

標準砂系9 試料及び黒土系9 試料を開始時、1、2、7 及び15 日経過時に容器より試料の一部を分取して、TPH の分析に供した。TPH 分析法は「油汚染対策ガイドライン(CS2 抽出―GC/FI)」に準拠した。

3.結果と考察

(1)アルカリ活性化条件とBz 分解性

SPS 濃度とBz 分解性を24 時間経過時の減衰率で見ると、SPS 濃度が高くなるほど減衰率が上がる傾向が認められた。24 時間以後もSPS の酸化力は持続し、168 時間後では全てのケースで減衰率はほぼ100%となった(表-3)。

フエントンタイプにおける酸化力の持続性の短かさ4)に較べれば、AA・SPS はより持続性のある化学酸化法といえる。

同一濃度のSPS の活性化ⅰ)をⅳ)の苛性ソーダ(NaOH)を用いた場合と比較すると24 時間後及び168 時間後の減衰率はほとんど変わらなかった。アルカリ活性化剤は現場における薬剤の取り扱いの容易性や安全性からR 社のAA 剤は適正な薬剤と評価できる。

(2)BTEX の分解性

AA・SPS によるベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレンの分解は反応初期においては一次反応-kt=lnCt/Co に従うと仮定し、それを図-1に示した。

アルキルベンゼンはベンゼン環のメチル置換基が増加するとともにベンゼン環の電子密度が増加し電子密度の高い部位に求電子的なヒドロキシルラジカルが付加しベンゼン環の開裂へと進むと言われている5)

したがってBTEX の中でアルキル置換基が無く電子密度が最も低いベンゼンの反応速度が遅くなると考える。

(3)塩素化VOC の分解性

塩素化VOC とAA・SPS は前述のBTEX と同様に初期においては一次反応に従うとする。図-2に4 種類の塩素化VOC と AA・SPS における反応時間とCt/Co(初期濃度に対するt 時における濃度)の関係を示し、その傾きから反応速度定数を得た(表-5)。AA・SPS と塩素化VOC の反応では分子中に炭素と炭素間に二重結合を有する塩素化エテン(PCE、TCE、cis1.2-DCE)の方が炭素と炭素の間が一重結合である塩素化エタン(1.1.1-TCA)に比べ、分解されやすいと評価できる。既存化学物質安全評価シートに記載されている大気圏における塩素化VOC とヒドロキシルラジカル(・OH)との反応による半減期はTCE(6~8日)でcis1.2-DCE(3~7 日)と同程度で、PCE(48~96日)の順で、最も半減期が長いのは1.1.1-TCA(1.6~4.1年)と報告されている。本研究の水溶液系においても1.1.1-TCA はAA・SPS に対して、24 時間後では分解が認められず、168 時間後で減衰率は約50%となり、1.1.1-TCA は難分解性のVOCと評価できる。

本研究ではTCE が最も反応速度が速い結果が得られたが、TCE 以外のVOC では既報告と同じ傾向であった。

(4)TPH の分解性

本項では土壌中のTPH の化学酸化による分解性を把握することを大きな目的としている。そこでTPH 分解に媒体の性質に影響を受けない標準砂系及び媒体に被酸化性の有機物を多く含み、TPH 分解に影響を与える可能性のある試験系を黒土系とした。

ここではフェントン系(T-F、C-F)及びAA・SPS の特徴をフェントン系のTPH 分解性の比較から明らかにした。

1)AA・SPS の系

・酸化剤(SPS)濃度が高くなるに従いTPH の分解率は大きくなる(図-3、図-6)。
・酸化力の持続性があり、15 日までわずかではあるが上がり続け、15 日後の分解率は60~70%(図-6、図-3)。

2)フェントン系(T-F 及びC-F4)

・T-F とC-F のTPH 分解率に大きな差は認められず、同程度であった。
  T-F の7 日後分解率は45~62%
  C-F4)の7 日後分解率は50~60%
・酸化剤の持続性はSPS 法に比べ短く、7 日以降、分解率はプラトー(横ばい)状態(図-4、図―5)。
・酸化反応は7 日以内で停止している(図-4、図―5)。
・TPH 分解率に対する濃度依存性が大きいことは、薬剤の添加量の大小が分解率への影響が大きい。

(5)反応の阻害性

TPH 分解に与える土壌有機物

黒土系における3種類の酸化法のTPH 分解性は低く15 日経過時で減衰率は15~20 程度(%)であった。酸化法の違いは認められなかった。

フェントン化学酸化における有機物の酸化は硫酸ラジカルあるいはヒドロキシルラジカルの酸化力によるものであるために、無差別に酸化が起きる。

ここで用いた黒土の強熱減量は33%であり、多量の有機物を含む土壌であるので、ラジカルは多量の有機物側で消費され、TPH に十分な酸化剤が行きわたらないために、TPH 分解が進まなかった原因と考えられる。

4.まとめ

AA・SPS(アルカリ活性化過硫酸ソーダ)化学酸化法はBTEX、塩素化VOC 及びTPH の分解性評価試験結果から既に実績のあるフェントン化学酸化に較べ初期の反応速度は若干遅くなるものの、酸化力の持続性が長く確保できる長所があり、フェントン酸化タイプに遜色のない化学酸化法であると評価できる。

AA・SPS 法は今までフェントン不適であったアルカリ性土壌あるいは酸消費量が大きくフェントン酸化法が適用できなかった琉球石灰岩地質の沖縄地域にも適用可能であると評価する。

AA・SPS は土壌有機物を多量に含む土壌に対しての適用は不向きである。この点についてはフェントンタイプの酸化法に対しても阻害要因となる。

参考文献

1)

中間哲志, 長野克己, 大澤武彦, 山内仁(2007):フェントン反応を用いた浄化方法について、土壌・地下水汚染とその防止対策に関する研究集会講演集

2)

The Interstate Technology & Regulatory Council(2005):In Situ Chemical Oxidation Team:Technical and Regulatory Guidance for In Situ Chemical Oxidation of Contaminated Soil and Groundwater Second Edition, p.17.

3)

Scott G. Holing and Bruce E. Pivetz:Engineering issue In-Situ Chemical Oxidation, United States Environmental Protection Agency, pp.10~11.

4)

大澤武彦(2008)原位置フェントン化学酸化法の安定化に関する研究、第14 回土壌・地下水汚染とその防止対策に関する研究集会講演集

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