土壌汚染調査・浄化 株式会社エンバイオ・エンジニアリング

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発表論文

フェントン原位置浄化後の地下水モニタリング期間の評価

(著作者)
  • 山内 仁
  • 中間 哲志
  • 西村 実
  • 草場周作
  • 和知剛
  • 長野勝己
  • 株式会社エンバイオ・エンジニアリング

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1.はじめに

自主的対策の場合、原位置浄化を行った後の浄化終了判定のためのモニタリング期間は、どの程度が適切か。筆者らは2004年より行なってきたフェントン原位置浄化サイトのうち、事業の業種が給油所(廃止および営業中)であり事前調査を行い浄化作業後に一週間以上の期間の地下水モニタリングを実施したサイトを対象として、浄化作業後の地下水中の浄化対象物質濃度の推移を整理した。また、長期にわたり基準適合が継続することを予測できる地下水モニタリング期間とそのための条件を評価した。

2.評価対象とした原位置浄化サイトの情報と原位置浄化の方法

(1)評価対象のサイトの情報

評価対象としたサイトの情報を表1に示す。総て給油所を対象としており、サイト数は20箇所、地下水観測井数は22箇所である。

給油所の場合、汚染の可能性のある特定有害物質の種類はベンゼン等に限定される。汚染発生の原因となりうる設備配置が図面として残されており、また、ベンゼンを含有するガソリン等は地下水面に浮くことから汚染は地下水面付近を中心に広がるといった特徴があることからトリクロロエチレン等と比べると汚染源の把握は容易である。今回評価対象とした地下水観測井は、汚染源の位置又は調査時に最も高い濃度を検出した地点に設置してある。

表1 サイトの情報
項目 データ
サイト数 20
観測井数 22
業種 給油所
浄化対象物質 ベンゼン
対象物質の地下水濃度 最大30mg/l
地質 砂~有機質粘土
地下水位 GL-1.0~3.0m
地下水観測井の位置 汚染源の位置又は調査時に最も高い濃度の地点
モニタリング期間 最短:1週間
最長:32ヶ月
事前調査による汚染源の把握 十分  観測井数:17
不十分 観測井数:5
浄化による汚染源の除去 十分  観測井数:7
不十分 観測井数:5
上記以外観測井数:10
浄化実施の契機 土壌汚染対策法:0
条例に基づく:4
自主:18

(2)原位置浄化の方法

浄化方法はフェントン反応剤による原位置浄化であるが、不飽和帯に汚染がある場合には不飽和帯部分を掘削除去したサイトもある。

フェントン原位置浄化とは過酸化水素、硫酸第一鉄およびクエン酸等を組み合わせた薬剤(フェントン反応剤)を土壌中に注入し浄化を行う原位置酸化分解法である。

フェントン反応剤による原位置浄化のポイントは、いかにして適量の薬剤をLNAPLに接触させるかにある。このため、事前調査、トリータビリティー試験結果、設計、フェントン反応剤注入及びモニタリングの手順で浄化対策を行っている(図1参照)。

事前調査では特に汚染原因やLNAPLの存在位置、汚染の拡散経路および浄化が必要な範囲を評価している。トリータビリティー試験ではフェントン反応剤による浄化対象物質の分解の程度およびフェントン反応剤の注入量や注入回数を評価して設計の基礎データとしている。

設計では注入方法(ロッド注入か井戸注入か等)や注入井戸の仕様、フェントン反応剤の配合や使用量、スケジュールをトリータビリティー試験結果、地質、浄化対象範囲および汚染濃度に応じて決定する。井戸注入だけによる浄化では注入井戸の間隔は通常1.0m~3.0mである。

フェントン反応剤の注入は注入井戸やボーリングロッドを介して行なう。注入作業は通常3回(STEP1~STEP3)に分けて行なっている。浄化作業時のモニタリングでは地下水中の対象物質濃度の他、地下水のpHや酸化還元電位などを測定して浄化対象範囲内でフェントン反応が生じていることをモニターしながら作業を行なっている。フェントン反応剤注入後の地下水では、溶存酸素濃度が20mg/l以上、酸化還元電位が約300mVとなり、地下水の温度が初期温度に比べて10度程度上昇する。

3.地下水モニタリングの経過の整理

(1)地下水モニタリングの期間

評価対象としたサイトまたは地下水観測井でのモニタリング期間の最長は32ヶ月である。一方、最短は一週間である(図2参照)。

モニタリング期間中に地下水ベンゼン濃度が基準不適合となる時期はモニタリングの初期段階で迎える観測井が多い。得られたデータによると、一週間から1ヵ月以内に基準適合から基準不適合になっている。しかしながら、中にはモニタリング20ヶ月まで基準適合、これ以降のモニタリングで基準不適合になった地下水観測井(名称1)もあった。

名称1の観測井の汚染状況は不飽和帯から飽和帯にある有機質粘土の中にLNAPLをパッチ状に含有しており汚染源の除去が不十分であったサイトである。

(2)汚染源の浄化の程度と地下水モニタリング結果の推移

1)汚染源の浄化が不十分である場所にある地下水観測井

有機質粘土などの地層中に浄化作業後もLNAPLの残留があったり、建屋下などの浄化作業の範囲外にLNAPLの残留が予想されたりする場所(サイト内の一部の場所を指す)にある観測井である。契約上の理由で、十分な作業範囲、作業数量または工法の変更ができなかったサイトの観測井も含まれる。上記名称1の観測井もこの分類に含まれる。合計5箇所の観測井のうち、モニタリング期間中に4箇所が基準不適合となった。

モニタリング期間中の地下水ベンゼン濃度の推移を図3に示したが、モニタリングの初期段階で基準不適合になっている。一箇所の観測井で継続して基準適合を観測しているが、同場所の地質は不飽和帯に有機質粘土があり、同有機質粘土にLNAPLが残留しているが透水性が低いため地下水への影響が少ない。一方、それより下位にある帯水層の砂層の浄化は十分であったため基準適合を継続していると推定している。

2)汚染源の浄化が十分にできた場所の地下水観測井

事前調査により汚染源の把握ができ、浄化作業により汚染源の除去が十分にできたと判断できる場所の観測井である。汚染源でのベンゼン土壌溶出量が不検出(定量下限値0.001mg/l)であることを特徴とする。

これらの観測井では最長22ヶ月のモニタリングを行っているが、総ての観測井で基準適合を継続している(図4参照)。また、図5に3ヶ月間のモニタリング結果を示したが、浄化後の地下水濃度の上昇はわずかしかなく、浄化作業直後に不検出であればその後のモニタリングでも基準不適合になることはない。

3)汚染源の浄化に関して上記1)および2)以外のサイト

事前調査により得られた汚染源情報は十分とはいえなかったが、知りえた情報の範囲内や懸念される範囲での浄化作業は十分に行った場所の観測井。汚染源の浄化は十分に行ったが、浄化範囲外からの汚染地下水の流入のおそれのある観測井も含まれる。表4で基準不適合となった一箇所の観測井の濃度上昇の原因は、サイト内の汚染源は十分に浄化できたが、汚染源から拡散していた汚染地下水が移動してきて濃度上昇の原因となったと推定している。モニタリングの初期段階で地下水濃度が基準不適合になっている観測井もある。これらの観測井での地下水ベンゼン濃度は最大で基準の20倍程度となっていた。しかしながら、モニタリングを6ヶ月以上継続しているとベンゼン濃度は次第に減少して基準適合となっている。モニタリング開始後6ヶ月以降のベンゼン濃度には上昇傾向は認められない(図6参照)。

4.長期にわたり基準適合が継続することを予測できる地下水モニタリング期間とそのための条件

以上の整理検討の結果から、長期にわたり基準適合を継続する条件の一つには汚染源の把握と汚染源の十分な浄化であるといえる。

事前調査を行うことで汚染源を総て把握することができるわけではない(表1参照)。営業中の給油所では計量機や地下タンクおよび配管があり、どうしてもボーリング調査ができない場所がある。しかしながら、過去の調査結果および浄化作業中のモニタリング結果を評価することにより、汚染源の把握には不確実性があったとしても汚染源の浄化には十分に手を尽くしたといった浄化作業は可能である。

ただし、浄化作業の進行により地中の土壌や地下水の状況を表すモニタリング結果は刻々と変化する。汚染源の十分な浄化のためには、この変化に応じて浄化の仕様や工法を改善させなければならない。この改善ができる契約条件にあるかどうかも条件の一つといえる。

地下水モニタリング期間については、汚染源の浄化が十分な場所については短い期間でその後の地下水濃度の推移を予測できそうである。図5の地下水ベンゼン濃度の推移に注目すると、浄化作業直後の地下水ベンゼン濃度が不検出である場合には、その後も継続して基準適合である。したがって、この場合には浄化直後や一週間後のモニタリング結果での評価も有効であろう。

一方、浄化直後の地下水ベンゼン濃度が基準適合であるが比較的高い数値を検出している場所では、地下水ベンゼン濃度が減少傾向を示す一ヵ月後までの地下水モニタリングを行うことでその後の基準適合の予測がより確実となる。

汚染源の浄化が不十分な場所では基準不適合となる濃度の戻りは比較的早く、データでは一週間から1ヵ月以内に基準不適合となっている。言いかえると、汚染源の浄化が不十分な場所では1ヵ月以内の地下水モニタリングでも基準不適合となる地下水濃度を観測することとなり、汚染地下水の浄化に関しては不十分とする判断をすることができよう。20ヶ月間基準適合を継続する観測井もあったが、その後地下水ベンゼン濃度は基準不適合となっている観測井もある。したがって、浄化終了判定の評価を行うに当たっては、地下水モニタリング期間の長さの議論よりも汚染源の浄化の確実性の評価の方が重要であると考える。

汚染源の浄化に関して不確実性が残る場所については、浄化直後の地下水モニタリング結果が基準不適合であっても6ヶ月以降に基準適合になる場合がある。したがって、浄化直後のモニタリング結果で不検出等の十分に濃度が低い場合には短期間の地下水モニタリングでも評価は可能、基準不適合であった場合には長期間のモニタリングが望ましいといえる。

5.おわりに

現在、土壌汚染対策法の改正案が国会審議中である。法律改正の背景には掘削除去偏重の問題がある。このため掘削除去に代わる浄化措置として原位置浄化措置の社会的信頼性を高めようとする動きは重要である。

筆者らが評価対象としたサイトは給油所であり比較的小規模といった特徴がある。国内での原位置浄化には浄化対象物質がトリクロロエチレン等であったり規模が大きなサイトであったりする事例が多数存在していると考えられることから、筆者らの検討結果の適用範囲は広いとはいえない。しかしながら今後、浄化終了判定のための地下水モニタリング期間に関する科学的データを専門業界側から持ち寄ることで、原位置浄化措置の社会的信頼性が高まることを期待する。

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