土壌汚染調査・浄化 株式会社エンバイオ・エンジニアリング

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発表論文

有機性廃棄物由来の堆肥による鉛汚染土壌の不溶化と生態系修復

(著作者)
  • 北原亘1,2
  • 八木良介1
  • 加藤雅彦1
  • 佐藤健1
  • 1岐阜大学工学部
  • 2現在、株式会社エンバイオ・エンジニアリング

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1.はじめに

汚染土壌中からの重金属拡散により公共用水域の汚染、また、重金属の毒性により植生の荒廃、土壌微生物の活性低下1)、すなわち生態系の荒廃が懸念されている。不溶化とは、土壌中へ資材を添加することで重金属の溶出を抑制し、人への重金属摂取を防ぐ対策法である。現在の重金属汚染対策の主流である掘削除去に比べ低コストかつ低環境負荷で実施可能である。不溶化処理には汚染土壌をセメント等で物理的に固化させ重金属の溶出を防ぐ方法と、土壌中の重金属を溶解性の低い形態へ化学的に変化させる方法に大別される。前者は、固化により強度が増すため不溶化処理後の土木材料として有用であるが、土壌環境が著しく変化する。土木材料等として活用せず現場で埋め戻し、管理する場合は、不溶化後、汚染前と同等な土壌環境へ改善する必要がある。化学的な不溶化は、物理的な土壌環境を大きく変化させず、難溶性重金属の生成により植生や微生物への毒性低下も期待できる。特に、鉛の不溶化にはリン資材を使用し、土壌中で溶解度の極めて低い緑鉛鉱[Pb5(PO4)3OH]の生成が効果的と考えられている2)。

リン資材としては肥料として利用されるリン鉱石などがあるが、国内において排出されている有機性廃棄物にもリンが多く含まれており、代表例として家畜ふん尿、下水汚泥などが挙げられる。有機性廃棄物に含まれるリンの他にも有機物が重金属を吸着できることが知られており3)、有機性廃棄物の有効利用として鉛不溶化に用いることができる。さらに、有機性廃棄物を堆肥化、すなわち肥料とすることにより、鉛汚染により荒廃した植生の回復、生物の栄養源である有機物により土壌微生物の活性化が期待される。

本研究では、堆肥を添加することによる鉛汚染土壌の不溶化と生態系修復効果を検証し、不溶化と生態系修復を同時に行うことができる堆肥の化学性を考察した。

2.鉛汚染土壌中の不溶化と生態系修復

鉛汚染土壌に堆肥を添加したときの鉛溶出量,鉛化学形態と微生物の酵素活性の変化、植物生育量より堆肥による鉛の不溶化効果と生態系修復効果を検証した。

2.1 材料と方法

岐阜県内の射撃場より採取した鉛汚染土壌を風乾後、粒径2mm以下にふるい、供試した(以下、原土)。
供試堆肥は、市販の堆肥である牛ふん堆肥と豚ぷん堆肥の2種類を用い、以後、堆肥A、堆肥Bとした。
原土10.00gを100mlポリビンに量りとり、堆肥A、堆肥Bを1.00g加えた。また、堆肥を加えない処理区も用意した(以下、ブランク)。原土の最大容水量の60%となるように超純水をポリビンに添加し、十分に混合、25℃で培養した。培養開始0日、7日、30日、90日、184日(約6ヶ月)にポリビンを取り出し、凍結乾燥後、鉛溶出量,鉛化学形態分析に供した。また、培養開始184日目の試料に対して微生物の酵素活性分析を行った。
植物生育試験は、以下の通り行った。原土300gと堆肥A、堆肥B 9.00gをよく混合した後、7.5cm×7.5cm×9.5cm×のアクリルポットに入れた。また、堆肥を添加しない処理区も用意した。土の最大容水量の60%となるように超純水を添加し、2週間養生した。その後、鉛汚染土壌において生長阻害が知られている4)、ヘアリーベッチ(Vicia villosa Roth)の種子をポット当たり5個播種し、最終的に2本に間引いた。温度20℃の室内で14時間の日照条件で生育させた。水分補給は、3日に1回、蒸留水で行った。

2.2 分析方法・項目

(1)鉛溶出量

環境省告示第18号を参考にし、鉛溶出量を評価した。試料2.00gを50mlコニカルチューブに秤量し、超純水20mlを加えて24時間水平振とうした。振とう後、5000rpmで5分間遠心分離し、0.45μmメンブレンフィルターでろ過した。ろ液の鉛濃度を ICP-AES(ULTIMA2、HORIBA)にて測定し、鉛溶出量とした。また、ろ液の有機炭素量を全有機炭素計(TOC-VCSH, SHIMADZU)にて測定し、水溶性有機炭素量とした。
US-EPAにて定められているTCLP(Toxicity Characteristics Leaching Procedure)による溶出量を評価した。TCLPは、土壌、有機・無機態の廃棄物、液状物・固形体からの有害物の移動性を評価する指標である。試料2.00gを50mlコニカルチューブに秤量し、0.1M酢酸(pH2.88)40mlを加え、24時間水平振とうした。振とう後、5000rpmで5分間遠心分離し、0.45μmメンブレンフィルターでろ過した。ろ液の鉛濃度をICP-AESにて測定し、TCLP-Pbとした。

(2)逐次抽出法による土壌中の鉛の化学形態分析

逐次抽出法は、Tessierら5)による方法を用い、土壌中の鉛の化学形態を以下の表1のように分別した。なお、培養開始184日後の試料に対して分析を実施した。

(3)酵素活性

土壌中の微生物が一般的に分泌するとされている有機物の分解酵素の活性を測定することで、土壌微生物の活性を評価した。本研究では、3種類の酵素に対して活性を評価し、以下の表2に示した。なお、培養開始184日後の試料に対して実験を実施した。

(4)植物生育

発芽2ヶ月後に植物の地上部を切り取り、生重量を測定した。その後、70℃で8時間乾燥し、マイクロウェーブ発生装置により酸-加熱分解し、ICP-AESにて鉛濃度を測定し、植物体地上部分に吸収された鉛量を測定した。

2.3 結果

(1)供試土壌、供試堆肥

原土のpH(H2O)、鉛溶出量、水溶性有機炭素量、TCLP-Pb、鉛含有量、全鉛量を表3に示した。原土は、中性で、鉛溶出量が3.5mg L-1であり、環境基準値:0.01 mg L-1の350倍だった。TCLP-Pbも86 mg L-1であり、US-EPAの定める鉛の基準値6):5 mg L-1の17倍だった。また、土壌中の鉛含有量は、2337 mg kg-1で含有量調査の環境基準値:150 mg kg-1の約16倍、全鉛量も4399 mg kg-1、であり、原土は、鉛で高濃度に汚染された土壌であることが示された。
供試堆肥は、堆肥A、堆肥Bとも中性だった。本研究においては、堆肥A:牛ふん堆肥、堆肥B:豚ぷん堆肥を用い、一般的に牛ふん堆肥は、水溶性有機炭素量、リン量が少なく、豚ぷん堆肥は、水溶性有機炭素量、リン量が多い堆肥である。 そのため、堆肥Aは、堆肥Bと比較すると水溶性有機炭素量、全リン量も少ない堆肥であった。

(2)鉛溶出量

鉛溶出量の推移を図1に示した。堆肥Aは、培養が進むに従い鉛溶出量が減少傾向にあったが、ブランクと大差なかった。堆肥Bは、90日後に鉛溶出量が増加したが、その後減少し、ブランクと変わらない量になった。
水溶性有機炭素量の推移を図2に示した。堆肥Aは、90 mg L-1から37 mg L-1の範囲で推移し、ブランク(10 mg L-1から25mg L-1)の1.5倍から9倍だった。一方で堆肥Bは、0日目の水溶性有機炭素量が872 mg L-1とブランクの約60倍だったが、184日後には375 mg L-1に減少し、約半量になった。
TCLP-Pb の推移を図3に示した。原土は、約100 mg L-1で推移したが、いずれの堆肥も減少傾向にあり、約20 mg L-1から約5 mg L-1に推移し、鉛の基準値(5 mg L-1)と同水準まで低下した。

(3)鉛の化学形態分析

培養開始184日後の試料に対して逐次抽出法による鉛の化学形態分析を実施し、結果を図4に示した。ブランクは、比較的溶解性の高い形態である交換態割合と炭酸塩態割合の和が60%であり、有機物複合態割合、残渣態割合がそれぞれ9%、6%だった。いずれの堆肥を添加した場合も交換態割合が1%以下となり、炭酸塩態割合が減少、残渣態割合が増加した。堆肥Aは、炭酸塩態割合が31%に減少し、有機物複合態割合が20%、残渣態割合が17%に増加した。堆肥Bは、さらに残渣態鉛の増加量が多く、残渣態割合が49%になり、炭酸塩態は17%となった。

(4)酵素活性

デヒドロゲナーゼ活性、ウレアーゼ活性、酸性ホスファターゼ活性をそれぞれ図5、図6、図7に示した。堆肥A、堆肥Bとも、いずれの酵素の活性もブランクよりも高くなる結果を示した。特に堆肥Bは、どの酵素の活性も堆肥Aより高い傾向を示した。

(5)植物生育

栽培開始2ヶ月後における地上部のヘアリーベッチの生重量と鉛吸収量をそれぞれ図8、図9に示した。いずれの堆肥も生重量は、ブランク(0.4g)よりも多くなり、堆肥A:2.2g、堆肥B:5.0gだった。また、体内への吸収量は、堆肥A:130 mg kg-1、堆肥B:16 mg kg-1となり、ブランクの636 mg kg-1よりも著しく低かった。堆肥Bは、堆肥Aと比較して、生重量が多く、植物体内への鉛吸収量を抑制する結果となった。

2.4 考察

(1)鉛の不溶化効果

逐次抽出法による鉛の化学形態分析では、全リン量(表4)の多い堆肥Bの方が残渣態鉛の占める割合が多かった(図4)。リンは、鉛と反応して緑鉛鉱[Pb5(PO4)3OH]と呼ばれる極めて溶解性の低い化合物を形成するため2)、リン量の多い堆肥Bにおいて緑鉛鉱が多く生成され、残渣態割合が多かったと考えられた。緑鉛鉱の溶解度積log Kspは、-25.052)と炭酸鉛(log Ksp=-13.487)と比べ極めて低いため、堆肥中のリンとの反応により、土壌の交換態鉛や炭酸塩態鉛などの比較的溶解性の高い形態の鉛が緑鉛鉱と考えられる残渣態へ形態変化したと考えられた。堆肥A、堆肥Bの交換態割合は、どちらも1%以下に抑制されているため、堆肥A、堆肥BのTCLP-Pbがブランクと比べて顕著に低く、最終的にどちらも約5 mg L-1に抑制されたと考えられた。
堆肥の添加により、土壌中の鉛の溶解性が低下し、TCLP-Pbも抑制されたが、鉛溶出量は、ブランクと大差ない、またはブランクを上回った(図1)。土壌中の重金属は、溶液中で溶存有機物と錯体を形成することが知られており8)、鉄酸化物などの表面に吸着している水に不溶な形態の鉛を土壌から解離させることで重金属の溶出を促す9),10)。特に堆肥Bは、含まれる水溶性有機炭素量が多いため(表2)、土壌に添加した際も水溶性有機炭素量が多くなり(図2)、鉛溶出量も増加したと考えられた。しかし、微生物による水溶性の有機物の分解により11)、水溶性有機炭素量が減少したことで(図2)、鉛溶出量も減少したと考えられた。一方で堆肥Aは、含有される水溶性有機炭素量が少ないため(表2)、鉛溶出量もブランクを上回らなかったと考えられたが、含まれるリン量も少ないため鉛溶出量がブランクを大きく下回らなかったと考えられた。
堆肥の添加によりTCLP-Pb、すなわち移動性のある鉛を抑制することはできるが、鉛溶出量の減少のためには、水溶性有機炭素、すなわち水溶性の有機物量が少なく、リンがより多く含まれている堆肥が不溶化資材に適していると考えられた。

(2)生態系修復効果

いずれの堆肥を添加した場合も一般的な土壌酵素の活性が高まっており(図5、図6、図7)、微生物の栄養源である有機物の供給による土壌微生物の活性化と堆肥由来の微生物の供給による微生物数の増加が原因と考えられた。さらに、堆肥Aよりも堆肥Bの方で酵素活性が高い傾向にあった。これは、微生物に利用されやすいと考えられる水溶性の有機物が多く含まれていることが原因と推察された。
堆肥の添加により、鉛への耐性がないヘアリーベッチの生育量(生重量)が増加し(図8)、植物体内への鉛吸収量が抑制された(図9)。土壌中の鉛が不溶化され、植物への鉛吸収量が減少したため、鉛に耐性のないヘアリーベッチの生育が進んだと考えられた。堆肥Aと比較し堆肥Bの方が生育量は多く、鉛吸収量は少なかった。不溶化量(残渣態割合)、肥料成分(リンなど)が多い堆肥ほど、植物生育量が多くなると推察された。
いずれの堆肥を添加した場合も生態系修復効果は確認された。不溶化効果が高く、肥料成分の多い堆肥ほど植物生育量が多く、生態系修復効果も高いと推察された。

3.不溶化資材に適した堆肥の化学性

鉛汚染土壌の不溶化と生態系修復を同時に行うことができる不溶化資材の化学性として、以下の堆肥が考えられた。すなわち、水溶性の有機物量が少なく、リンがより多く含まれており、リン以外のカリウムや窒素などの肥料成分の多い堆肥が不溶化資材に適していると考えられた。

4.まとめ

本研究では、堆肥を添加することによる鉛汚染土壌の不溶化と生態系修復効果を検証し、不溶化と生態系修復を同時に行うことができる堆肥の化学性を考察した。
含まれるリンの量が多い堆肥ほど、土壌中の鉛化学形態は溶解性の低い形態へ変化し、土壌中で移動性のある鉛量(TCLP)は抑制されることが明らかとなった。水溶性の鉛である鉛溶出量を低減させる場合は、水溶性の有機物量が少ない堆肥を用いる必要が示された。このことから、鉛の不溶化を促す資材の化学性として、リン量が多く、水溶性有機物の少ない堆肥が適していると考えられた。
堆肥の添加により、有機物(微生物の栄養原)が増加し、土壌微生物の活性化と堆肥由来の微生物が供給され、酵素活性が高まることが考えられた。土壌中の鉛が不溶化され、植物への鉛吸収量が減少したため、鉛に耐性のないヘアリーベッチの生育が進んだと考えられた。また、不溶化量(残渣態割合)、肥料成分(リンなど)が多い堆肥ほど、植物生育量が多くなると推察された。
以上より、鉛汚染土壌の不溶化と生態系修復を同時に行うことができる不溶化資材の化学性として、水溶性の有機物量が少なく、リンが多く含有され、リン以外のカリウムや窒素などの肥料成分の量も多い堆肥が考えられた。

5.参考文献

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2)

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3)

Saeki, K. (2004): Adsorption of Fe2+ and Mn2+ on silica, gibbsite and humic acids, Soil Science, Vol. 169,No. 12, pp.832-840.

4)

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5)

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6)

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Wu, Z., Gu, Z., Wang, X., Evans, L. and Guo, H. (2003): Effect of organic acids on adsorption of lead onto montmorillonite, goethite and humic acid, Environmental Polllution, Vol. 121, pp.469-475.

9)

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10)

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11)

Pare, T., Dinel, H., Schnitzer, M. and Dumontet, S. (1998) : Transformation of carbon and nitrogen during composting of animal manure and shredded paper, Boil Fertil Soils, Vol. 26, pp.173-178.

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