土壌汚染調査・浄化 株式会社エンバイオ・エンジニアリング

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発表論文

ガソリンスタンド跡地の浄化対策等作業時の臭気管理手法の一案

(著作者)
  • 株式会社エンバイオ・エンジニアリング

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1.はじめに

悪臭は典型七公害の一つで、大気、騒音に次ぎ、苦情件数の多い公害であり、悪臭防止法(1971年制定)で規制されている1)。悪臭防止法では、特定悪臭物質(不快なにおいの原因となり、生活環境を損なうおそれのある法に定められた22物質)および臭気指数(悪臭の評価値)について定義されているが、「悪臭」について定義はされておらず、一般には、知覚できる臭気の内、不快と感じる臭いのことを指す2)。また、悪臭は騒音・振動と同様に人間の感覚を刺激して不快感を及ぼす感覚公害である。

環境省によると、悪臭の苦情件数は、平成3年(9972件)から件数が増加し、平成15年(24577件)をピークに現在(平成22年:15194件)では減少傾向にあるものの、近年顕在化している問題と言える。法制定当初は主要な悪臭の発生源であった畜産農業や化学工場への苦情は減少する一方で、近年は飲食店などのサービス業や個人住宅など、身の回りの悪臭に対する苦情が増加する傾向にある3)

においの強さ(臭気強度)とにおい物質濃度の関係を図1に示す。においの感覚とにおい物質濃度の関係は、対数に比例すること(ウェーバー・フェヒナーの法則)が知られており、におい物質濃度が10分の1となっても人の感じる臭いの強さは半分にしかならない4)。悪臭は風に運ばれ、悪臭原因物質濃度が低減しても悪臭は広範囲に拡散し、苦情を発生させることになる。加えて、公害苦情の特徴である地域の人間関係等、悪臭の程度とは無関係の要因も加わり、悪臭問題を複雑にしている例も多い。そのため、悪臭防止行政がほかの公害防止行政と比較してその解決が著しく困難とされ、その対応に長期間を費やすことが多いのも、上記のような種々の要因が絡んだ感覚公害であることが大きいからである4)

ガソリンに起因する土壌汚染が存在する場合、開削を伴う作業時には、悪臭の発生が懸念される。ガソリンは沸点が約20度~約220度と低いため揮発しやすく、その成分中に特定悪臭物質であるトルエン(レギュラーでは約10%、ハイオクでは約24%含有)、キシレン(レギュラーでは約5%、ハイオクでは約6%含有)を含むためである。

筆者らは、ガソリンに起因する汚染土壌の浄化工事を行う際の周辺環境管理項目として、発生する臭気について、客観的に評価する指標として測定値を用いた管理が必要であると考えた。そこで、においの簡易分析装置(以下、においセンサーと表記する)のを用いた臭気の定量化ついて検討し、概ね良好な結果を得たため、以下に報告する。

2.悪臭防止法

悪臭防止法による規制は、悪臭により生活環境が損なわれ、かつ規制基準に不適合であった場合に改善勧告が出され、従わない場合、罰則が与えられるという流れになっている2)

規制基準は、特定悪臭物質の濃度による評価と臭気指数による評価のどちらかを都道府県知事(政令市長)により指定され、敷地境界(1号規制)、排出口(2号規制)、排水口(3号規制)について適用されている2)

臭気指数とは、臭気を感じなくなるまで無臭空気で希釈した時の希釈倍率(臭気濃度)を求め、その常用対数値に10を乗じた数値で、3点比較式臭袋法によって求められる2)

臭気指数=10×Log(臭気濃度)

臭気指数は、においを人の嗅覚を用いて測定するため、悪臭に対する被害感覚と一致しやすいという利点を持っている。また、臭気指数は、特定悪臭物質以外の未規制のにおい物質や、複合臭に対応できることも利点である6)

3.現場周辺環境の管理法の検討

悪臭防止法によると悪臭の定量は、特定悪臭物質の濃度もしくは臭気指数によって行われる。特定悪臭物質の濃度は、必ずしも悪臭のすべてを数値化しているわけではない。そこで今回は、臭気指数を定量化し管理する方法を検討した。

臭気指数の公定分析法である3点比較式臭袋法は、正確に測定するには有効であるが、測定操作が複雑であり、機器整備費用あるいは臭気の有無を判定するための判定員の人件費がかかる。また3点比較式臭袋法は、準備や分析に時間がかかり、現場での迅速な対応が難しい。今回のような現場周辺の環境管理手法には、より簡便な評価方法が望ましい。においの簡易分析法については、(社)におい・かおり環境協会測定評価部会により、臭気簡易評価技術の活用に関する報告書7)がまとめられている。その中で、においセンサー測定値と臭気指数との相関を確認し、得られた相関式をもとに臭気指数等を算出し、その結果をもとに臭気管理を行うことが臭気管理の現実的なアプローチであると示されている。また、臭気の組成・質が異なる場合、においセンサー測定値と臭気指数の相関式は大きく異なることも示されている。

そこで、3点比較式臭袋法によって求めた臭気指数とにおいセンサー測定値との間の相関を確認し、においセンサー測定値を用いた管理手法を検討することとした。また、管理には悪臭防止法に定められた1号規制(敷地境界での規制)を参考にすることとした。規制基準値に臭気指数を導入している行政の1号規制値を表1に示す。多数の行政が臭気指数10~15の範囲に規制値を設定していることから、その範囲において精度よく測定できる事を確認することとした。

表1 各行政の規制基準値
  大阪市 広島市 大津市 栃木県
規制基準(1号規制)
臭気指数
10 10~15
(地域により異なる)
12~15
(区域により異なる)
15~18
(地域により異なる)
  茨木市 川越市 神奈川県 東京都
規制基準(1号規制)
臭気指数
10 12~15
(区域により異なる)
10~15
(地域により異なる)
10~13
(区域により異なる)

4.においセンサー測定値と臭気指数の相関の確認

3点比較式臭袋法によって求めた臭気指数10~15の範囲におけるにおいセンサー測定値の相関を確認し、ガソリンに起因する汚染土壌の浄化工事を行う際の周辺環境管理に用いる事が出来るかを検討する。

4.1 使用するにおいセンサーの特徴

においセンサーは、熱線型半導体式検出器を備えたものを用いた。熱線型半導体式検出器は、白金線コイル上に金属酸化物半導体を保持させた検知素子と、ブリッジ回路で形成されている。検知対象ガスと検出素子が接すると、検知素子中の酸素が離脱し電気伝導度が変化、その変化量をブリッジ回路によって取り出し、検知対象ガス濃度を算出する。

熱線型半導体式検出器の主な検知対象ガスは一酸化炭素、可燃性ガス、アンモニア、アルコール等である。熱線型半導体式検出器はさまざまなガス成分を検出するため、バックグラウンドに測定対象ガス以外の検知ガスが存在すると、プラスの誤差を、オゾン、NOX等、酸化性ガスが存在すると、マイナスの誤差を発生させる。

においセンサーの取り扱いは容易で、装着した活性炭から得た無臭空気を用いてゼロ設定をすることで、連続で再現性良く測定が可能である。

4.2 相関の確認方法

一定のにおいを数段階に希釈し、その臭気指数とにおいセンサー測定値とを比較して相関を確認することとした。

測定試料の作成は、表2に示す油分を含有した土壌を用いて行った。シャーレに乗せた油分含有土壌100gと、活性炭により処理した無臭空気を臭気測定用袋に封入し、1時間静置したものの気相部分を原臭とした。原臭を無臭空気によってそれぞれ102倍、103倍、104倍に希釈したものを試料として3点比較式臭袋法より臭気指数を求め、さらににおいセンサー測定値を求めた。また、希釈倍率が大きいため、トルエン、キシレンを測定し、その希釈精度を確認した。

表2 油分含有土壌の油分濃度とその組成
TPH
(C6~C44)
GRO
(C6~C12)
DRO
(C12~C28)
RRO
(C28~C44)
6,700 6,100 560 20未満
※分析法:二硫化炭素抽出GC-FID法
※単位mg/kg

4.3 分析結果

上記操作によって得た試料について、3点比較式臭袋法およびにおいセンサーによって分析した。分析結果を表3に、臭気指数とにおいセンサー測定値の相関を図3に示す。なお、原臭と無臭空気のにおいセンサー測定値はそれぞれ874および61であった。

分析結果をもとに、臭気指数とにおいセンサー測定値の相関を求めたところ、104倍の試料の臭気指数を仮に10とした場合、臭気指数10~30の間でその相関係数(R2)は0.9999となり良好な相関関係にあることが確認できた。

また、トルエン、キシレンの濃度が102倍希釈試料と、103倍希釈の試料で約10倍の差があることから、精度よく希釈できていると判断できる。

5.まとめ

ガソリンに起因する汚染土壌から発生する臭気に対して、臭気指数とにおいセンサー測定値の間には、臭気指数10程度~30の範囲で良好な相関関係が認められた。

においセンサーは検出器に検知ガスに選択性がないため、臭気成分が変化する(臭気指数と、においセンサー測定値の関係が変化する可能性がある)、バックグラウンドに臭気が存在する(においセンサー測定値に正の誤差が発生する)等の場合は注意が必要となるが、一定の条件であれば精度よく臭気を定量化できることがわかった。

以上から、ガソリンに起因する汚染土壌から発生する臭気を、においセンサーで定量化し、周辺環境管理に用いることは十分可能であると考えられた。

今後、悪臭の発生が懸念される現場について、においセンサーを用いて周辺環境および現場管理を行い、さらなる知見を重ねたいと考える。

6.参考文献

1)

平成23年度公害苦情調査結果報告書 p8
公害等調整委員会事務局 平成24年11月

2)

悪臭防止法の手引き p2
環境省 水・大気環境局大気生活環境室 平成18年9月

3)

平成22年度悪臭防止法施工状況調査について p2~5
環境省 水・大気環境局大気生活環境室 平成23年12月22日

4)

臭気対策行政ガイドブック p1~4
環境省環境局大気生活環境室 平成14年4月

5)

ハンドブック悪臭防止法
(社)におい・かおり環境協会 平成24年7月25日

6)

悪臭苦情対応事例集(東京都における臭気指数および臭気濃度規制の運用事例)
環境省環境局大気生活環境室 平成15年3月

7)

臭気簡易評価技術の活用に関する報告書 p1~18
(社)におい・かおり環境協会測定評価部会 臭気簡易評価技術標準化研究会

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