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発表論文

過硫酸によるVOCsの分解性評価

(著作者)
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1.はじめに

化学酸化剤を用いたVOCs汚染の原位置浄化は、場外に汚染土壌や汚染地下水を搬出せず、その場で処理できることから、環境に優しくコストも比較的抑えることができ、近年実施件数が増えている。化学酸化剤を用いた原位置浄化には、主に過マンガン酸カリウム、鉄触媒および過酸化水素、活性化剤および過硫酸ナトリウム、オゾンによるものが知られている。その中で、鉄触媒および過酸化水素のフェントン氏反応を利用した原位置化学酸化工法は、薬剤の取扱いが他の化学酸化剤に比べ容易であること、薬剤が比較的安価であること、等から、改良を加えながら国内外で長く行われてきた。しかしフェントン氏反応剤は、過酸化水素の鉄触媒による分解反応がとても速く、土中における過酸化水素の残存する時間が短いために、浄化対象物質へ接触させることが困難であることが課題である。一方、過硫酸ナトリウムを活性化する工法では、過硫酸イオンの分解がゆるやかであるため、土中への供給後も2週間程度は残存するとされている。このため、活性化過硫酸による化学酸化工法は、原位置浄化対策工事への有効性が期待され、昨今多くの研究が行われている。現在、過硫酸ナトリウムの活性化法には、アルカリ性pH、金属触媒、金属触媒―キレート、熱、過酸化水素等を用いる方法が知られている。1)

しかし、活性化過硫酸ナトリウムを用いた化学酸化工法にも課題はある。硫酸や酸性pHによる機材や地中埋設物の腐食や、土壌・地下水のpH調整が難しいことである。最近では、過硫酸の活性化が困難である課題を克服するため、活性化剤と過硫酸ナトリウムが結晶に組み込まれた化学酸化剤PSも発明された。

本研究は、活性化過硫酸ナトリウムによる原位置浄化への適用を目的として行われている。はじめに、原位置浄化への適用が現実的と判断したアルカリ性pH、鉄触媒―キレート、アルカリ性pHと鉄触媒―キレートを用いた各活性化法での過硫酸によるVOCsの分解を比較した。次に、上記試験の結果、最も原位置浄化へ有効であると判断したアルカリ性pHによる活性化法と、化学酸化剤PSを比較し、化学酸化剤PSのVOCs分解性能評価を行った。

2.アルカリ性pH、金属触媒、キレート-金属触媒を用いた各活性化法の比較

2.1 使用材料と試験方法

本試験は、室内試験によりアルカリ性pH(2-I系)、金属触媒(2-II系)、アルカリ性pHとキレート-金属触媒(2-III系)を用いた各活性化法の比較を行った。試験は、水道水へテトラクロロエチレンを2mg/L添加した模擬汚染水を用いて行った。各試験系は、表2.1に示す通り調製した。
調製後、バイアル瓶はテフロンコートブチルキャップおよびアルミシールにより密閉し、静置した。
測定は、ガスクロマトグラフ/光イオン化分析法により、試験溶液中のテトラクロロエチレン残留濃度、ガラス電極法により、試験溶液のpHを行った。

表2.1 本試験に供した材料
添加薬剤 添加量
2-I系:アルカリpH活性化 過硫酸ナトリウム 1.0wt%
水酸化ナトリウム pH11程度にする量
2-II系:鉄触媒―キレート活性化 過硫酸ナトリウム 1.0wt%
鉄触媒 過硫酸ナトリウムの1/5モル
キレート剤P 過硫酸ナトリウムの1/5モル
2-III系:アルカリ性pHと鉄触媒―キレート活性化 過硫酸ナトリウム 1.0wt%
触媒R pH11程度にする量

2.2 試験の結果

本試験では、アルカリ性pH活性化法(2-I系)において、最も速いテトラクロロエチレンの分解が認められた。

表2.2.1 試験の結果(初期値)
pH 7
PCE濃度 2mg/L
表2.2.2 試験の結果(反応後)
反応時間 対照   反応   PCE減衰率(%)
PCE濃度(mg/L) pH PCE濃度(mg/L) pH
2-I系 21日 2 7 <0.001 2 100
2-II系 46日 2 7 0.0038 2 99.8
2-III系 46日 2 7 0.19 11 90.4

表2.2.2に示す通り、2-I系では、2mg/Lのテトラクロロエチレンが定量下限値未満まで分解されていることが、薬剤添加後21日で確認された。2-II系では、0.0038mg/Lと土壌汚染対策法に定められるテトラクロロエチレンの地下水濃度基準未満まで分解されていることが、薬剤添加後46日で確認された。2-III系は、46日経過後も0.19mg/Lと高濃度で残留していた。原位置浄化へ適用するには、現場の安全性を考慮し、反応時間が長すぎることは問題になる。したがって、反応時間が21日間であった2-I系が最も原位置浄化への適用性が高いと判断した。

2.3 試験のまとめ

本試験の結果、原位置浄化への適用性が高い活性化法は、反応時間が短く分解効率も高いため、敷地外拡散の恐れ等の観点から浄化工事の際安全性が高いアルカリ性pH活性化法であると判断した。

3.アルカリ性pH活性化法との比較による活性化剤と化学酸化剤PSの評価

3.1 使用材料と試験方法

本試験は、室内試験により化学酸化剤PSの性能評価を目的として行った。化学酸化剤PSは、主成分を過硫酸ナトリウムとし、メタケイ酸ナトリウムおよび二酸化ケイ素で構成される結晶である。比較には、2章の試験で最も原位置浄化へ適していると判断したアルカリ性pH活性化法を用いた。
サイトAにて採取した土壌とサイトBにて採取した地下水に、テトラクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタンを添加し模擬汚染土壌および模擬汚染地下水を調製した。各試験系は、表3.1に示す通り調製した。
調製後、バイアル瓶はテフロンコートブチルキャップおよびアルミシールにより密閉し、静置した。
3-GW-I系および3-GW-II系は、テトラクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、シス-1,2-ジクロロエチレン地下水濃度をガスクロマトグラフ/質量分析法により測定した。3-S-I系および3-S-II系は、テトラクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、シス-1,2-ジクロロエチレン土壌溶出量をガスクロマトグラフ/質量分析法により測定した。また、すべての試料のpHはpH試験紙、残留過硫酸濃度はヨウ素滴定法により測定した。

表3.1 本試験に供した材料
土壌 地下水 添加薬剤 添加量
3-GW-I系 なし あり 化学酸化剤PS 過硫酸ナトリウムが1.0wt%になる量
3-S-I系 あり 土壌を飽和させる程度 化学酸化剤PS 過硫酸ナトリウムが1.0wt%になる量
3-GW-II系 なし あり 過硫酸ナトリウム 1.0wt%
      水酸化ナトリウム pH12以上になる量
3-S-II系 あり 土壌を飽和させる程度 過硫酸ナトリウム 1.0wt%
      水酸化ナトリウム pH12以上になる量

3.2 試験の結果

3.2.1 テトラクロロエチレン

図3.2.1.1および図3.2.1.2に示す通り、地下水のみの試験系ではI系、II系ともに25%程度しかテトラクロロエチレンの分解が認められなかったのに対し、土壌を用いた試験系ではI系で98.2%、II系では25.9%のテトラクロロエチレンの分解が認められた。土壌を用いた試験系では、土壌中に金属鉱物が含まれているため、過硫酸と反応する金属が反応溶液中に溶出していき反応がすすんだと考えられる。ただし、3-S-II系の場合、反応溶液のpHが12程度に調整されていたために、金属の溶存できる量が限られていた点が3-S-I系と異なっている。この違いにより、過硫酸イオンが反応できる溶存金属が減り、3-S-II系では金属の供給源である土壌が存在していても、土壌の存在のない3-GW-I系および3-GW-II系と同程度の量のテトラクロロエチレンが分解された。

3.2.2 1,1,1-トリクロロエタン

図3.2.2.1および図3.2.2.2に示す通り、地下水のみの試験系ではI系では7.9%、II系では17.6%程度しか1,1,1-トリクロロエタンの分解が認められなかったのに対し、土壌を用いた試験系ではI系で80.7%、II系では11.1%の1,1,1-トリクロロエタンの分解が認められた。
上記の結果より、反応容器内では3-S-I系でのみ、1,1,1-トリクロロエタンを分解する反応が活発であったことが考えられる。また、3-S-I系に比べるとわずかではあるが、他の系でも1,1,1-トリクロロエタンの分解は認められている。この反応は、1,1,1-トリクロロエタンが塩素化エタン系に属しており酸化反応による分解は難しいことから、還元反応である可能性が高い。

[SO3―O―O―SO3]2- + H2O → HO2- + H+ + 2SO42-

・・・反応3.2.2.1

H2O2 ⇌ HO2- + H+

・・・反応3.2.2.2

[SO3―O―O―SO3]2- + HO2- → SO4-・+ SO42- + O2-・ + H+

・・・反応3.2.2.3

反応3.2.2.2のpKaは11.8であるため、pH11.8未満では、H2O2は分離しない。その場合、反応3.2.2.3は起こらないので、還元剤であるスーパーオキシドアニオンは生成されず、強力な酸化剤であるヒドロキシルラジカルが生成される。本試験では、pH11.8以上に反応溶液を調整したので、過硫酸イオンの分解がすすむ前のpHが11.8以上であった時に1,1,1-トリクロロエタンの分解が起こったのではないかと思われる。実際に図3.2.2.2では、4日目、7日目、35日目における3-S-II系の1,1,1-トリクロロエタン減衰率はあまり変化がない。
3-GW-I系および3-S-I系における還元反応は、反応溶液中に溶存する遷移金属と過硫酸イオンが反応することにより生成された還元剤が1,1,1-トリクロロエタンを還元分解したと考えられる。例えば過硫酸イオンは、二価の鉄と以下の反応3)をすることが知られている。

S2O82- + Fe2+ → SO4-・ + SO42- + Fe3+

・・・反応3.2.2.4

また、マンガンを含む鉱物が触媒として働く場合は、浄化対象物質が還元反応により分解することが知られている。3-S-I系でのみ、著しい1,1,1-トリクロロエタンの分解が確認されたのは、反応容器内土壌に含まれる遷移金属が十分に反応溶液中へ溶出し、過硫酸イオンと反応したためと考えられる。

図3.2.3.1および図3.2.3.2の減衰率に示す通り、シス-1,2-ジクロロエチレンは、I系もII系もほぼ分解した。これは、過硫酸が活性化剤と反応し分解されて生成される硫酸塩ラジカルやヒドロキシルラジカルによる酸化分解が主な化学反応と考えると、今回用いた特定有害物質の中で最も酸化分解しやすいシス-1,2-ジクロロエチレンを分解していったためである。

3.2.4 化学酸化剤PSの性能評価

化学酸化剤PSは、過硫酸ナトリウムを主成分とし、メタケイ酸ナトリウムおよび二酸化ケイ素を含む結晶である。本試験の結果では、土壌存在下35日間で、テトラクロロエチレンは98.2%、1,1,1-トリクロロエタンは80.7%、シス-1,2-ジクロロエチレンは99.4%と、塩素化エテン系および塩素化エタン系に対し高い分解性能を確認した。一方で、地下水のみで行った3-GW-I系では、各物質の減衰率がテトラクロロエチレンで23.5%、1,1,1-トリクロロエタンで7.9%、シス-1,2-ジクロロエチレンで59.7%であった。3-GW-I系におけるそれぞれの減衰率は、アルカリ性pH活性化法を用いた3-GW-II系のテトラクロロエチレンの28.6%、1,1,1-トリクロロエタンの17.6%、シス-1,2-ジクロロエチレンの84.4%、より小さい。この結果より、化学酸化剤PSによるVOCs分解では、土壌の存在が分解を促進している可能性が高い。土壌には金属鉱物が多く含まれていることがあり、反応溶液中で過硫酸イオンと金属が反応した後も、さらに反応溶液中へ金属を供給していくことが可能である点が、土壌と地下水の違いとして1つ挙げられる。したがって、地下水のみで行った3-GW-I系より3-S-I系の方が、過硫酸イオンと反応できる溶存した金属が反応溶液中に多かったと考えられる。また、化学酸化剤PSは結晶表面を用いて、遷移金属と過硫酸イオン、およびVOCsの反応を補助する働きがある。さらに、3-S-II系ではpHを12程度に調整したために反応溶液中に溶存できる金属の量が限られていた可能性がある。上記より、化学酸化剤PSの方が、土壌存在下では好条件が揃い、VOCsの分解がすすんだと考えられる。
本試験では、模擬汚染土壌の調製が難しく、全てのVOCsの濃度が相対的に低い範囲で試験が実施された。テトラクロロエチレンは0.2mg/L程度、1,1,1-トリクロロエタンは0.6mg/L程度、シス-1,2-ジクロロエチレンは0.5mg/L程度が初期値となってしまっている。また、土壌溶出量測定のため、密閉している反応容器のキャップを開けてしまっていることから、多くのVOCsが揮発してしまった。したがって、対照試料と反応試料の測定結果には、初期値と35日後の値程の大きな違いは認められない。上記より本試験の結果のみでは、原位置浄化への適用が適切には評価できないため、再度模擬汚染土壌をさらに高い濃度で調製し、揮発の少ない測定方法により、試験を行う必要がある。

3.3 試験のまとめ

本試験の結果、化学酸化剤PSは、土壌存在下、2章の試験において最も原位置浄化への適用性が認められたアルカリ性pH活性化法に比較して、VOCsの分解性能が高いことが確認された。テトラクロロエチレンでは、3-S-I系で98.2%、3-S-II系で25.9%、1,1,1-トリクロロエタンでは、3-S-I系で80.7%、3-S-II系で11.1%、シス-1,2-ジクロロエチレンでは3-S-I系で99.4%、3-S-II系で82.1%の減衰率が認められた。また、地下水存在下と比較すると、土壌存在下の方が、化学酸化剤PSによるVOCs減衰率が大きく、VOCs分解への土壌の影響が大きい可能性が考えられた。ただし、本試験は、試験開始時の土壌溶出量が各物質で1mg/L未満と低かったこと、土壌溶出量測定のため各物質の揮発が大きかったこと、から、VOCsの分解を適切に評価できていない点がある。したがって、原位置浄化への適用を適切に評価するため、本試験よりも高い濃度で模擬汚染土壌を調製し、揮発を最小限に抑えた測定方法により、試験を行う必要がある。

4.まとめ

本試験では、最初に原位置浄化への適用性が高いと考えられた、アルカリ性pH、鉄触媒―キレート、アルカリ性pHと鉄触媒―キレートによる活性化過硫酸法によるテトラクロロエチレンの分解を、水道水を用いた室内試験により評価した。この試験では、最も速くテトラクロロエチレンを2mg/Lから定量下限値未満まで分解したアルカリ性pH活性化法が最も原位置浄化への適用性が高いと判断した。
次に、化学酸化剤PSとアルカリ性pH活性化法を比較し、化学酸化剤PSの性能を、地下水および土壌と地下水を用いた室内試験により評価した。土壌存在下での化学酸化剤PSは、テトラクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、シス-1,2-ジクロロエチレンの全てを80%以上分解したことが確認された。同条件下でのアルカリ性pH活性化法では、全ての物質の減衰率が化学酸化剤PSに比べ低く、土壌存在下における化学酸化剤PSのVOCs分解性能の高さが認められた。また、地下水のみ行った室内試験では、アルカリ性pH活性化法の方が化学酸化剤PSによる活性化過硫酸法よりも各物質の減衰率が低いことが確認された。この結果より、化学酸化剤PSがVOCsを効果的に分解するには、土壌の存在が重要である可能性が高い。
化学酸化剤PSのVOCs分解性能評価試験では、試験開始時の各物質の土壌溶出量が1mg/L未満と低く、土壌溶出量測定のために各VOCsが揮発してしまったことから、本試験だけによる化学酸化剤PSの原位置浄化への適用性は適切に評価できないと判断した。したがって、次の試験として、本試験よりも高い濃度で模擬汚染土壌を調製し、揮発を最小限に抑えた測定方法による試験の実施が必要である。

5.参考文献等

1)

3) Petri BG, Watts RJ, Tsitonaki A, Crimi M, Thomson NR, Teel AL(2011): Fundamentals of ISCO Using Persulfate, In Situ Chemical Oxidation for Groundwater Remediation, pp.147—191.

2)

Furman OS, Teel AL, Watts RJ(2010): Mechanism of Base Activation of Persulfate, Environmental Science & Technology, Vol. 44, No. 16, pp.6423—6428.

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