土壌汚染調査・浄化 株式会社エンバイオ・エンジニアリング

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発表論文

プロパゲーション工法を用いた汚染土壌の原位置浄化方法

(著作者)
  • 中間哲志1
  • 山内 仁1
  • 安原雅子1
  • 今村幸則2
  • 1株式会社エンバイオ・エンジニアリング
  • 2株式会社リグランド

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1.はじめに

本報告では、プロパゲーション® 工法を用いた汚染土壌の原位置浄化工法を紹介する。プロパゲーション® 工法は、汚染された原位置地盤に透水性の高い円盤状の薄い砂層(プロパゲーション® )を形成し、これに化学酸化剤やバイオレメデーション促進剤を注入することにより、原位置で浄化を行う工法である。この工法のサイトへの適用にあたり、プロパゲーション® の形成確認のためのフィールド実験を事前に実施し、化学酸化剤(フェントン氏試薬)を用いた室内実験を行ったので、これらの結果についても報告し、この工法のサイトへの適用事例も併せて報告する。なお、この方法は米国EBSI 社が開発し、EPAでも紹介されている工法1)で、当社は同社との提携により、この工法の日本国内での独占使用権を獲得している。

2.プロパゲーション® 工法の概要

2.1 プロパゲーション® 工法とは

プロパゲーション® 工法は、プロパゲーション® と呼ばれる砂層を原位置地盤に形成することにより浄化剤の汚染土壌への浸透をスムーズに行ない、効率良く原位置浄化を行うことができる。この工法の主要技術である砂層を形成する方法は、ハイドロフラクチャー法を応用したものである。一般的にハイドロフラクチャー法は、岩盤を対象として坑井内に地層・岩層が保有する応力に打ち勝つような高圧の流体(フラクチャリング流体)を圧入し、地下に亀裂(フラクチャー)を生じさせ、その亀裂を拡張・伸展させると同時に開口した割れ目が閉じないように粒状の間詰め用の物質プロパント(支持材)を充填してプロパント層を形成し、透水性を増加させることで油井や熱水の生産量、還元量を増加させることを目的として用いられる。プロパゲーション® 工法は、ハイドロフラクチャー法の支持材を圧入する手法を土質地盤に応用し、形成される砂層(プロパゲーション® )を浄化剤注入のための透水層として活用する(図-1)。

2.2 工法の手順と用いる材料

本工法は、①削孔、②高圧ジェット先行切削、③フラクチャースラリー圧入(フラクチャリング)、④浄化促進剤注入、といった一連の手順で行われる(図-2)。削孔にはジオプローブを用いる。ジオプローブは、汚染土壌のサンプリングや地下水の観測井戸、注入井戸の設置などに用いられ、注目されている。削孔用のケーシングの先端に置き捨てコーンと呼ばれる円錐形の削孔ヘッドを取り付け、ケーシングを打撃圧入して削孔を行う。削孔後、所定長さケーシングを引き抜いた後に②、③の作業は行われるが、置き捨てられたコーンはプロパゲーションを形成する深さの目安とし て利用でき、また圧力の下方抜けを抑止する効果があると筆者らは考察した。

③のフラクチャリングの際に用いられるフラクチャースラリーの材料には、呼び径1.5mmの濾過用の砂(均等係数1.7)、CMC(土木材料として一般的に用いられている材料)、酵素(食品添加剤)および水を混合したものを用いる。CMC溶液は砂を分散して圧送するためのキャリアー媒体となる。酵素は、フラクチャー形成直後にCMCを分解し、CMC 溶液の粘性を低下させ、プロパゲーション® を形成することを目的に添加される。そのため、CMC溶液の濃度、酵素の添加率~フラクチャリング圧力~圧入時間の関係がプロパゲーション® のスペックを決定する要素となる。

2.3 プロパゲーション工法の特徴

プロパゲーション工法の特徴は、1) 建物直下の汚染浄化、2) 店舗の営業、工場の操業を続けながらの浄化、3)少ない井戸本数で広い範囲の浄化、4)ホットスポット(汚染源)の浄化、5)透水性の低い地層の浄化、など他の工法では浄化が困難な場所にも適用でき、効率良い浄化効果が得られることである。また、施工~浄化までのプロセスがボーリング調査で行う一連の作業にプロパゲーション®形成と薬剤の注入作業を加えただけの簡易な工程であり、用いる機械も従来の削孔機にプロパゲーションリグ(写真-1)のみのシステム化されたものを用いるため、従来工法より低コスト・短期間の原位置浄化が可能である。図-3に施工のイメージを示す。

既存技術(化学酸化、バイオ法、鉄粉還元、土壌ガス吸引)との組合せが可能な点も本工法の特徴として上げられる。この技術の導入先である米国EBSI社では、本工法を用いた化学酸化法により、VOCs、油類(TPH、BTEX、PAHなど)、PCB等の土壌汚染物質を浄化した実績がある。筆者らは、現在の日本における土壌浄化市場と薬剤の安全性を考慮して、VOCsと油類の浄化のみを対象とし、①化学酸化剤としてフェントン反応剤(H2O2+Fe2+)を、②バイオレメデーション促進剤として普及しているORCあるいはHRCを用いることにしている。フェントン反応剤については、米国でも土壌 浄化の分野で広く使われており、その実績について数多くの論文発表や報告2)がなされている。

3.フィールド実験

フィールド実験は、プロパゲーション工法の施工手順の確立と原位置に形成されるプロパゲーション層の出来形確認、およびフラクチャリング圧力~圧入時間の関係を把握することを目的として実施した。フィールド実験を行った場所の原位置地盤の物理的、力学的性質を表-1に示す。フィールド実験を実施したサイトは、埋土、火山灰質粘性土、砂混じり粘土層、粘土混じり砂層で構成されており、粘土混じり砂層はGL-3.2m付近に風化を受けた整合面(厚さの薄い茶色の層)を挟んでいた。このようなサイトにおいてCMC溶液の濃度、砂添加率、フラクチャースラリーの注入流量をパラメータとして、5 地点でGL-2.5m~GL-3.3mにプロパゲーションの形成を試みた。プロパゲーション形成後はバックホウにて開削を行い、出来形の確認を行った。

実験の結果を図-4に示す。実験結果、以下のことが明らかになった。

プロパゲーション® が形成されることが確認できた。フラクチャースラリーの注入量、注入圧力を調整することで、概ね半径R=4.0m以上、厚さt=0.5cm~2.0cm程度を確保できる。

プロパゲーション® は、土質の変化する境界部分に形成されやすい。

GL-2.5m以浅の浅いところでは、プロパゲーションは形成できなかった。3m以浅ではプロパゲーションは形成できないというEBSI 社のデータを裏付ける結果が得られた。

4.プロパゲーションの適用事例

本工法を稼動中の工場建て屋直下の汚染土壌浄化に適用した事例を報告する。

このサイトは、稼動中の生産機械ラインが設置されている工場建屋直下がVOCs で汚染されており、既設建屋に影響を与えることなく原位置汚染の浄化が可能なプロパゲーション工法の適用が望まれた。現在、プロパゲーション® の施工と浄化剤の注入が完了し、モニタリングを実施している。図-5にプロパゲーション® の配置を、図-6にプロパゲーションの設置断面を、図-7に現地盤の土質柱状図を、また表-2にプロパゲーション® の出来形を示す。プロパゲーション® は、GL-7.5m~GL-9.5mの位置に汚染の濃度に応じて設置深さを変え、4 箇所に設置した。プロパゲーション® の施工に際して、フラクチャースラリーの圧入時に先行削孔された孔跡からのスラリーの逃げに伴うフラクチャー圧力の低下が予測されたため、深度の浅い順に設置した。

設置されたプロパゲーション® の直径は~8.0m程度で、施工後のチェックボーリングにより出来形の確認を行った(写真-2)。バイオレメデーション促進剤が、設置されたプロパゲーションにそれぞれ注入されていることを観察時の色と臭いにより確認できた。今後、本サイトでは観測井戸で地下水の採水を実施し、汚染物質の濃度の経時データを収集してゆくことでプロパゲーション® による浄化効果の確認を行ってゆく予定である。

5.おわりに

汚染部位は建物直下や地下構造物あるいは埋設物の周辺であるケースが多く、筆者らはプロパゲーション® 工法がこうした汚染部位の原位置浄化方法として有効な工法であると考えている。現在、油やVOCs で汚染されている複数のサイトにこの工法を適用している。井戸注入ではあるが、フェントン氏試薬による浄化も効果を上げており、プロパゲーション® 工法へのフェントン氏試薬注入の可能性にも十分な手ごたえを感じている。今後は、実サイトから得られる濃度データを蓄積し、浄化実績を積んで、その効果を公表してゆきたい。

[参考文献]

1)

U.S. Environmental Protection Agency:Hydraulic Fracturing Technology, SITE, No.EPA/540/SR-93/505, 1993

2)

Tang W. Z., Environmental Technology, 18(1), pp13-pp23, 1997

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